遡ること1990年代前期、
当時のMTBライダーなら誰でも知っているスーパーヒーロー John Tomac が Yeti チームから去り、新たにファクトリーチーム入りした移籍先は Raleigh だった。当時としてはMTBの世界にはほぼ関係のないNikeがスポンサーにつくほどの超スーパースターのサポートをきっかけに、あのNikeがサイクリングシューズの販売も開始、これも大注目な出来事だ。しかもロードバイクシューズではなく、マウンテンバイク用をリリースしたわけで…ウワァ〜!っと誰もが驚く、いわば事件だった。その上デザインが超かっこいい!Nikeがデザインするとこんななのねぇ〜さすがはNike、頭が下がります。
その頃フリーのフォトグラファーの私は、仲間のカメラマンと共にUCIのオフィシャルフォトグラファーというとても名誉ある撮影仕事も受け、全てのワールドカップを転戦、撮影していたのですが、そんな私たちでも Tomac は特別な存在。その頃は当たり前だったのだけど、XCとDHレースを掛け持ちするライダーがアメリカにはとても多かった。その中でも両方のジャンルで常に表彰台レベルをキープできていたのが唯一無二の存在だった John Tomac だ。今で言う大谷翔平選手の二刀流に匹敵する特別な存在だったのですね。
Nike のMTBシューズはその John Tomac に履かせるために開発、デザインされたもので、同じものがNikeストアで購入できたのもMTBファンにとっては嬉しい出来事だった。私は当時は出始めだったSPDペダルを愛用していたので、すぐさまこのNike PhoohBah (プーバァ)を購入、2足履きつぶし、最後にアメリカで買ったこの1足は新品のまま使わず、永久保存版として大切に保管していたわけです。
その後色々あって、MTBに乗るならフラットペダル使わないと上手にはなれないよ!という私が最も信頼しているライダーの助言でフラットペダル派になり、愛用していたSPD対応のNikeを履かなくなった。これは当時 KONAのフリーライドライダーで親睦のあった John Cowan (USA) の勧めで ♪どんなにぶつけても壊れない!Shimano DXペダル以外は考えられない♪ という歌まで歌うくらいDXペダル推しの(Shimano USAのスポンサーライダーだけどその意見の信憑性はかなり高い) Cowan選手の勧めで、クロマグの取り扱い仕事を始めてしばらく経ってもDXペダル一本でした。
使用し始めてから分かったことですが、DXペダルの頑丈さのほかに大きな特徴はシューズのソール形状(反っているとかフラットだとか)を選ばずどんな形でも適度にグリップしてくれるペダル面の絶妙なコンケーブ形状があり、多くのフラットペダルがバンズなどのスケーター向けシューズ前提のペダル面形状デザインに対し、ハイキングシューズなどでMTBに乗るような私にはとても嬉しい設計でした。その後 Chromagでもフラットペダルモデルを次々にリリースし、DXペダルユーザーから Chromag の SCARAB や CONTACT ペダルを愛用し現在に至っています。期せずしてChromagのペダルもペダル面がコンケーブしており、船底型にソリのあるハイキングシューズもしっかり噛んでくれることは輸入代理店の私には無理せず安心して使えることとなり、ボーナスでした。
さて、それが…です。
オーストラリアにDH帝国となるきっかけを作った Chris Kovarick 元選手/元オーストラリアDHチーム監督のシグニチャーシリーズとして、PilotというSPD対応のビンディングペダルをリリース、フラットペダル派の私ですがお仕事としてPilotとPilotBA 2機種のビンディングペダルの取次販売を開始させていただきました。しかし、かれこれ発売から2シーズンになりましたが、正直私は一回もPilotシリーズを使っていないのです。輸入代理店を営む身として、これはかなりまずいですよねぇ〜という気持ちがありましたが、やっといっちょ使ってみないとね!という気持ちになり、あ、靴がない!とか思っていたのですが、あのNikeを隠し持って?いたことを思い出したわけです。しかし、Nikeの靴底の一部を剥がしクリートを装着するのは勇気が必要です。ひょっとするとこの靴は引き続きキープ保存しておくかもですが…ともかく近々折を見てPilotペダルとともに山に繰り出してみようかと思っております。
Pilotペダルのことより自分の世代スーパーヒーロー、元祖?二刀流の John Tomac のことを話したかった感じですが、そういうお話です。若い皆さんには何のことかさっぱりでしょうけど…貴重なお時間を駄文に費やしてくださったこと感謝いたします。